研究紹介
飲料の口当たりを評価するAI技術「ソムリエアニマロイド」の開発
飲料の口当たりや飲み心地は、飲料の品質評価において重要な指標です。専門家であるソムリエたちは、その微妙な感覚を評価し、飲料の特性を詳細に説明することができます。しかし、このような評価を一般的に利用可能にするためには、科学的かつ客観的な方法が求められます。
本研究では、飲料の微細なテクスチャーを客観的に評価する新技術「ソムリエアニマロイド」を開発しました。この装置は、ソフト材料と圧電センサーを組み合わせることで、飲料の口当たりに関連する微小な圧力を高精度に検知し、機械学習を用いて識別することができます。
具体的には、飲料を容器に注ぎ、その容器を振ることで生じる圧力を圧電センサーで測定します。このセンサーはソフト材料を通じて感知するため、材料の動的特性がデータに反映されます。取得されたデータは、ピーク部分を抽出し、特徴量を生成した後、機械学習アルゴリズム(ロジスティック回帰)に適用されます。このプロセスにより、飲料の微細な違いを高精度に識別することが可能になります。
本装置の特徴は、「口で転がす」という飲み方の動作を再現することにあります。飲料を口の中で転がすように装置内で流動させ、その際に生じる圧力変化を圧電センサーで測定します。ソフト材料を経由することで、センサーが感知する圧力は材料の特性に依存します。この特性を利用して、飲料の識別精度を向上させることができます。
研究結果から、ソフト材料の物性、特にヤング率が識別精度に大きく影響することが示されました。適切な材料を選択することで、より高精度な識別が可能となります。この技術は、飲料のラベル識別だけでなく、ユーザーの好みに合わせた飲料の選択や提案など、幅広い応用が期待されます。
「ソムリエアニマロイド」は、飲料の微細なテクスチャーを客観的に評価するための新しいアプローチを提供します。この技術により、一般消費者も専門家と同じように飲料の品質を評価し、楽しむことができるようになるでしょう。今後の展望として、さらなるデータの蓄積とアルゴリズムの改良により、より高度な飲料選択システムの構築を目指します。
Year | Name | Title | Conference |
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2023 | 長瀬 駿介, 廣瀬 航佑, 小川 純, 渡邉 洋輔, MD Nahin Islam Shiblee, 古川 英光 | 『口で転がす』機械学習法の提案:柔軟材料を介するフレキシブルセンシングの信号処理に基づく飲料識別 | 第22回情報科学技術フォーラム(FIT2023) |
2023 | 長瀬 駿介, 廣瀬 航佑, 小川 純, 渡邉 洋輔, MD Nahin Islam Shiblee, 古川 英光 | 炭酸飲料の品質評価に向けた実応答型テクスチャ識別装置の検討 | 第41回日本ロボット学会学術講演会 |
2023 | 長瀬 駿介, 廣瀬 航佑, 小川 純, 渡邉 洋輔, MD Nahin Islam Shiblee, 古川 英光 | 飲料テクスチャに触発された知識埋込みゼラチン識別子 | Conference on 4D and Functional Fabrication 2023 |
2024 | 長瀬駿介, 小川純, 古川英光 | 「ソムリエアニマロイド」:飲料のテクスチャ識別装置の開発 | 第23回複雑系マイクロシンポジウム(最優秀プレゼンテーション賞) |
2024 | 長瀬駿介, 小川純, 古川英光 | スマート枡「ノムヨ」:圧電センシングによる酒の識別と情報提示インタフェースの開発 | ロボティクス・メカトロニクス講演会2024 |